著者:Henk Dieteren, Clinical Trial Supply Consultant
これは「供給効率向上のための IRTを使った変革」に関する 3 部構成のビデオブログシリーズの第 1 部で、Henk Dieteren、Amaury Jeandrain 氏(N-SIDE 社 Clinical Supply Chain VP Strategy、Life Sciences)、Kamal Amin 氏(Galderma 社 Head of Supply Chain Management)が登場します。 この第 1 部では、臨床試験における主なコスト要因について取り上げます。
市場投入にかかるコストは、長年にわたり着実に増加しており、この10年間だけでも推定で140%の増加が見られます。新薬を市場に投入するには、平均して約26億ドルの費用と最長15年という時間が必要です1。残念ながら、この多額の投資が必ずしも承認に結びつくわけではなく、米タフツ大学医薬品開発研究センター(CSDD)の研究によれば、開発中の医薬品のうち最終的に承認されるのは10%未満です2。
これらの費用の大半は臨床試験にかかっています。 臨床試験の費用は試験のフェーズが進むごとに増加し、米国議会予算局の報告によると、企業は承認された新薬それぞれにつき平均 10 億ドルを臨床試験に費やしているとされています3。
このことは、特に試験における供給に関して、予算編成と予測を慎重に行うことの重要性を強調しています。 治験依頼者は、まず主要なコスト要因を把握し、治験薬のサプライチェーンを最適化することでコストを積極的に管理できます。
「供給効率向上のための IRTを使った変革」ウェビナーから抜粋したこの動画では、治験薬供給コストに影響を及ぼす主な要因と、それらに関連する複雑さについて議論しています。
コスト要因 1:治験薬の製造
製造コストは治験薬供給コストの大きな部分を占めることがありますが、使用する薬剤の種類によって異なります。 バイオ医薬品のような複雑で個別化された薬剤は、特に製造コストが高く、特別な包装が必要となる場合が多いです。また、ラベル表示やアセンブリに時間がかかる複雑なキット設計が求められることもあります4。
さらに、臨床試験におけるバイオ医薬品の使用は、2010 年から 2022 年までの間に 10% も増加しています。 個別化医療やバイオ医薬品の使用が増加することで、臨床試験における供給予算に占める治験薬製造の割合がさらに増えることになります。
適切な予測を行わなければ、試験チームが治験実施計画書に基づいて必要なキット数を過大に見積もる可能性があります。 臨床試験のために調達する薬剤は保存できる期間も限られているため、遅延や用量変更など予期せぬ変更が生じると、供給が無駄になってコストが急騰します。
コスト要因 2:対照薬の調達、標準治療(SOC)、アジュバント療法
対照薬、標準治療(SOC)、アジュバント療法の薬剤を一般市場で購入すると、非常に高額になることがあります。 例えば、タフツ大学 CSDD の報告によると、製薬企業上位 10 社が対照薬の調達にかけた費用の総額は年間 2,000 万ドルを超えているとのことです5。その一因として、治験依頼者が卸売り価格や割引価格ではなく小売価格で購入していることが多いことが挙げられます。 その結果、対照薬、SOC、アジュバント療法が試験の総供給コストに占める割合は、少なくとも全体の40~50%に達すると見積もられています。
コスト要因 3:ロジスティクスおよび税金
臨床研究において、国境を越えた多施設共同試験がますます標準的なものとなってきています。 グローバルなアプローチは、科学や公衆衛生に多くの利点をもたらしますが、同時に物流に関する課題も引き起こします。 例えば、ラテンアメリカやアジア太平洋地域の一部の国々では、高額な医薬品輸入税や輸入品の通関手続きの長時間化といった制約が存在します6。さらに、コールドチェーン管理が必要な薬剤では、温暖な地域や小規模な治験施設での取り扱いが一層難しくなり、輸送や物流における大きな課題となる場合があります。 さらに、 Pharmaceutical Commerce 誌の報告によれば、バイオファーマ企業のコールドチェーン物流にかかる世界全体の支出は2018年以降増加を続けており、2024年には213億ドルに達する見込みです7。
より良い臨床試験のための治験薬供給の合理化
臨床試験が煩雑になるにつれ、関連する供給コストも上昇する傾向にあります。 これこそが、医薬品開発全体のプロセスを通じて、効果的な供給管理を重視する必要がある理由です。 臨床試験における供給を適切に行うことで、コストを 15~20% 削減できる可能性があります8。しかし、それ以上に重要なのは、治験薬供給を最適化することで、薬剤を必要としている患者さんに確実に薬剤を届けること、輸送による環境負荷を軽減すること、適切な薬剤を適切な患者さんに適切なタイミングで届ける治験実施施設の作業を簡素化できることが可能になる点です。
Henk、Amaury、Kamal による「供給効率向上のための IRT トランスフォーメーション」のウェビナー全編をご覧いただき、治験薬供給を最適化するための専門的戦略を見出してください。
参考文献
- “The pursuit of excellence in new-drug development.” McKinsey & Co., November 2019.
- “Expert: High costs, complexity are headwinds for growing clinical trials sector.” Regulatory Focus: A RAPS Publication, June 2023.
- “Research and Development in the Pharmaceutical Industry.” U.S Congressional Budget Office, April 2021.
- “Demystifying Complex Clinical Trial Kit Preparation.” Pharmaceutical Technology, 2021.
- “A Look at the Comparator Drug Sourcing Market.” GEP, 2019.
- Roopal Patel, Juan Bamberger. “Overcoming Complexities of Clinical Trial Supplies in Latin America.” Applied Clinical Trials 26, no. 10 (2017).
- “Pharma Cold Chain: Pushing the Envelope.” Pharmaceutical Commerce, September 2021.
- “Clinical supply chains: How to boost excellence and innovation.” McKinsey & Co, November 2021.
著者
Henk Dieteren
Clinical Trial Supply Consultant, Suvoda